カイヤン雑記帳

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測度論ゼミ~測度の構成

おはようございますまたはこんにちはまたはこんばんは。カイヤンです。

今日は久しぶりに測度論ゼミのまとめを書こうと思います。

測度論ゼミ:サークルの有志による測度論と積分論のゼミ。世間的に見て平易と思われる本を読んでいる。

Lebesgue測度の構成と基本性質の網羅が終わり、今日のゼミから可測函数についてでした。 ここでは前回のゼミまでの内容、Lebesugue測度の構成までの流れをまとめようと思います。

前回のまとめまでの概要

前回までの時点で完了していたのは完備化まででした。 測度空間の完備化とは、測度0の集合の部分集合も可測集合となりかつ測度0であるようにすることでした。 こうすることで「ゴミより小さいモノ」も「ゴミ」として扱えるようになるわけです。 積分するときに測度0集合の部分集合が積分したい範囲に入り込んで来ると、その集合が可測でない場合積分できなくなってしまいますが、 どれだけ小さな集合のせいなのかと言えばほとんど至る所等しいという非常によく用いられる同値関係で無視される存在です。 こんなやつのために理論の邪魔をされたくはないので、ちゃんと扱えるようにします。その意味で完備なのでしょう。

さてそのあとは測度の構成の準備段階として外測度を定義していました。これを使って測度を構成したりするのが今回の記事です。

測度の構成

外測度

Xを集合とします。集合函数 \eta : P(X) \rightarrow [0,\infty ] が次を満たすとき、 これを外測度(outer measure)という:

 \eta (\emptyset) = 0
 A,B \in P(X), A \subset B \Rightarrow \eta(A) \leqq \eta(B)
 A_n \in P(X) (n \in \mathbb{N}) \Rightarrow \eta \left( \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \right) \leqq \sum_{n \in \mathbb{N}} \eta(A_n)

この外測度を使って測度を構成するのですが、これは便利な概念に過ぎず、構成にあたって必要な物はむしろ有限加法的測度です。 有限加法的測度は集合体の上で定義される集合函数で、測度の加法性が有限個でしか成立しないものでした。この子から実は外測度を作ることができます。

誘導外測度

 Xを集合、 \mu_0 : \mathfrak{F}_0 \rightarrow [0,\infty ]を集合体上の有限加法的測度とする。このとき

 \mu^* : P(X) \rightarrow [0,\infty ]
 \mu^* (A) = \inf \{ \sum_{n \in \mathbb{N}} \mu_0 (A_n)| \{ A_n \}_{n \in \mathbb{N}} \subset \mathfrak{F}_0,A \subset \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \}

と定めるとこの集合函数は外測度となる。この外測度 \mu^* \mu_0による誘導外測度という。

こうして有限加法的測度から外測度が作れました。この外測度から測度を作りたいのですが、現状集合体しかありません。σ集合体であって作る測度の定義域になってくれるような子が欲しいわけです。外測度が与えられたとき、そのようなものはどうやって作るのでしょうか。それがカラテオドリ可測集合です。

カラテオドリ可測集合

外測度 \mu^*が与えられているとき、 集合 A \subset Xが 外測度 \mu^*-可測集合あるいはカラテオドリ可測集合とは

 \forall E \subset X,\mu^*(E)=\mu^*(E \cap A) + \mu^*(E \setminus A)

が成立することをいう。カラテオドリ可測集合全体を \mathfrak{M}_{\mu^*}と書き、 \mu^*-可測集合族あるいはカラテオドリ可測集合族という。

 E=(E \cap A) \cup (E \setminus A)なので外測度の劣加法性から実際は

 \mu^*(E) \geqq \mu^*(E \cap A) + \mu^*(E \setminus A)

であればよいです。

カラテオドリ可測集合族は実はσ集合体になります。そしてこの上に外測度を制限すると測度、それも完備化された測度が出来上がるのです。

定理:外測度による完備測度の構成

 Xを集合、 \mu^*: P(X) \rightarrow [0,\infty ] を外測度とする。このとき

 \mu = \mu^* |_{\mathfrak{M}_{\mu^*}}

とすると (X,\mathfrak{M}_{\mu^*},\mu)は完備測度空間となる。

他に大事な性質として、誘導外測度のカラテオドリ可測集合族は元の集合体を含むというものがあります。

こうしてめでたく有限加法的測度から外測度を経由して完備測度を構成できました。

Lebesugue測度を作るのが大目標でした。上の方法で構成できるのでしょうか。できないことはない気がします。しかしLebesugue測度が持っていてほしい性質を調べるのは困難です。リーマン積分を再考し抽象化するというのがルベーグ積分という更なる大目標でしたので、区間の長さなど最低限測りたい集合がLebesugue測度にはあるのですが、どのような集合を測れるのかというのが上述したカラテオドリ可測という条件ではわかりにくいのです。

区間たちの集合をどんどん拡張していくことで「わかりやすい集合族」の上にLebesugue測度は定義されてほしいのです。もとの集合体として、区間の直和からなる集合族がとれることにはとれますが、これの拡張がカラテオドリ可測集合になる保証は現状在りません。それを保証するべく測度の拡張というものを考えます。次回の記事で測度の拡張を扱います。

以上です。お付き合いいただきありがとうございました。

P.S. 頼むからはてなブログはもっとmarkdown記法のときの数式を書きやすくしてほしい。\でエスケープが必要だったり不必要だったりに一切規則性がないわ、[]その他記号をmarkdownと認識するわで書きにくすぎる。何か良いCSSスタイルはあるのだろうか。 せめてPDFを添付できるようにしてほしい。